プロの当り屋、赤木圭一郎は、今を去ること十年前、当り屋専門学院の講師、当り屋文左衛門が言った言葉を思い出した。<br />「幻の少年カスパー・ハウザーを見た日、あんたは当り屋をやめなあきまへん」。<br />そして圭一郎は見た、幻の少年が、車の前へ身を躍らせるのを……。<br />場外馬券売り場のガード下からアンスバッハのしらゆきつもる公園へ。<br />母と子の愛憎が交錯する悲しくも美しい妄想の純文学。<br />戯曲「小指の思い出」原作。<br />