紬と絣の研究をしている高階は、越後に旅して志保子を知った。<br />夫に死別し、ひとり娘を育てながら、雪に埋もれてひっそり塩沢紬を織る志保子。<br />しかし二人の愛は辛夷の花が散るように、もろくも崩れてゆく……。<br />微妙にかみあわなくなる女の情念と男のエゴイズム。<br />その心理の揺れを、落日の雪山に、また雪どけ水を運ぶ魚野川の冷たい流れに映して、鮮烈な抒情をかもしだす長編ロマン。<br />