生来の快楽主義者であり、病気のなかにさえ愉しみを見いだすと、友人たちから冷やかされていた作家もいまは70歳。<br />そして、老作家の過去は少しずつ年と共に死んで行き、女体への追憶による彼の魂は、壮年のそれから青年に、少年に、幼児にと時間を遡る。<br />乳房・背中・髪・脣・瞳・茂み・臍・掌・腰・顔……それらは彼に記憶された女体。<br />眩い光と濃い影の性愛の世界へ誘う幻想小説。<br />