晴やかに装っても振り返る者のない生活に失望し、兄の買ってくれた赤いミニで散ってゆく娘、老醜と整形したふくよかな乳房を花嫁衣裳に包み宣伝パレードに繰り出す老婆、夫のいわれのない嫉妬にいたたまれない気持になる女……。<br />つましく生活する市井人の姿を架空の町・菜穂里を舞台に浮び上らせる。<br />もの悲しい場内がスポットライトをあびる、サーカスの意匠に仮託した連作短編集。<br />