人の世と山との境界に、夫の伊久男とひっそり暮らす老女、日名子。<br />雪の朝、その家を十八歳の真帆子が訪れた。<br />愛する少年が、人を殺めて山に消えたのだという。<br />彼を捜す真帆子に付き添い、老夫婦は恐ろしい山に分け入ることに。<br />日名子もまた、爛れるほどの愛が引き起こしたある罪を、そこに隠していたのだ──。<br />山という異界で交錯する二つの愛を見つめた物語。<br />島清恋愛文学賞受賞。<br />