「恥の多い生涯を送って来ました」。<br />そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。<br />男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。<br />でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。<br />「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。<br />だれもが自分のことだと思わせられる、太宰治、捨て身の問題作。<br />