夢みたいに流れる風景にみとれた私は、原付バイクごとあぜ道へ突 っ込む。<br />空と一緒に回転し、田んぼの泥に塗れた19歳だった私と、14年後の私がつかの間すれ違う。<br />互いの裸を描き合った美術講師の房子や、映画監督の夢をかかえて消えた友の新之助、そして旅先で触れた様々な言葉。<br />切れ切れの記憶を貫いて、ジミヘンのギターは私のそばで静かに発火する。<br />寡黙な10代の無二の輝きを刻む物語。<br />(解説・近田春夫)