還暦間近の夫婦に、92歳の父と87歳の母を介護する日がやってきた。<br />母の介護は息子夫婦の苛立ちを募らせ、夫は妻に離婚を申し出るが、それは夫婦間の溝を深めるだけだった。<br />やがて母は痴呆を発症し、父に対して殺意に近い攻撃性を見せつつも、絶食し自ら命を絶つ。<br />そして、夫婦には父の介護が残された……。<br />自らの体験から老親介護の実態を抉り出した、凄絶ながらも静謐な佐江文学の結実点。<br />(解説・櫻井よしこ)