妻に離婚を切り出され取り乱す夫と、その心に甦る幼い日の記憶(「月が笑う」)。<br />人気料理研究家になったかつての親友・春花が、訪れた火災現場跡で主婦の紀美子にした意外な頼みごと(「平凡」)。<br />飼い猫探しに親身に付き添うおばさんが、庭子に語った息子とおにぎりの話(「どこかべつのところで」)。<br />人生のわかれ道をゆき過ぎてなお、選ばなかった「もし」に心揺れる人々を見つめる六つの物語。<br />(解説・佐久間文子)