火葬したはずの妻が家にいた。<br />「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。<br />生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。<br />屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。<br />早く消えたい。<br />女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。<br />生も死も、夢も現(うつつ)も飛び越えて、こころを救う物語。<br />(解説・名久井直子)