万葉歌人は、じつは恋愛下手でした――。<br />若い大伴家持から恋歌を贈られた年上女性の、理性と情熱の揺らぎを描く「年下の男」。<br />夫に愛想を尽かした妻が出した結論「しゑやさらさら」。<br />恋の歌が苦手な女の前に現れた庭を愛する男との、不意の出来事が胸を焦がす「恋の奴」。<br />その他、下級役人の滑稽な同棲「紅はかくこそ」など全七編。<br />歌人たちのおおらかで不器用な恋の一瞬を、みずみずしく描く傑作。<br />(解説・上野誠)