豆のスープをかき混ぜてもの思いに遊ぶ黒い〈奇異茶店〉。<br />サングラスの表面が湖の碧さで世界を映す眼鏡屋。<br />看板文字の「白薔薇」が導くレジスタンス劇。<br />カント、マルクス、マヤコフスキー。<br />ベルリンを幾筋も走る、偉人の名をもつ通りを、あの人に会うため異邦人のわたしは歩く。<br />多言語の不思議な響きと、歴史の暗がりから届く声に耳を澄ましながら。<br />うつろう景色に夢想を重ね、街を漂う物語。<br />(解説・松永美穂)