豪雨が続いて百年に一度の洪水がもたらしたものは、圧倒的な‘泥’だった。<br />南インド、チェンナイで若い IT 技術者達に日本語を教える「私」は、川の向こうの会社を目指し、見物人をかきわけ、橋を渡り始める。<br />百年の泥はありとあらゆるものを呑み込んでいた。<br />ウイスキーボトル、人魚のミイラ、大阪万博記念コイン、そして哀しみさえも……。<br />新潮新人賞、芥川賞の二冠に輝いた話題沸騰の問題作。<br />(解説・末木文美士)