その誰かは、そこにあるものが本当にあることを確認するために、彼の幅広い手をいっそう強く握りしめた。<br />長く滑らかな指、そして強い芯を持っている。<br />青豆、と天吾は思った。<br />しかし声には出さなかった。<br />彼はその手を記憶していた。<br />──青豆と天吾、二人は「物語」の深い森を抜けてめぐり逢い、その手を結び合わせることができるのか。<br />ひとつきりの月が浮かぶ夜空に向かって……。<br />