秋が終り冷たい風が吹くようになると、彼女は時々僕の腕に体を寄せた。<br />ダッフル・コートの厚い布地をとおして、僕は彼女の息づかいを感じとることができた。<br />でも、それだけだった。<br />彼女の求めているのは僕の腕ではなく、誰かの腕だった。<br />僕の温もりではなく、誰かの温もりだった……。<br />もう戻っては来ないあの時の、まなざし、語らい、想い、そして痛み。<br />リリックな七つの短編。<br />