四歳の頃、つなごうとした手をふりはらわれた時から、母と私のきつい関係がはじまった。<br />終戦後、五人の子を抱えて中国から引き揚げ、その後三人の子を亡くした母。<br />父の死後、女手一つで家を建て、子供を大学までやったたくましい母。<br />それでも私は母が嫌いだった。<br />やがて老いた母に呆けのきざしが──。<br />母を愛せなかった自責、母を見捨てた罪悪感、そして訪れたゆるしを見つめる物語。<br />(解説・内田春菊)