私は夫と離婚をする。<br />そのことを両親に報告せねばならない。<br />実家へ向かう路線バスのなかで、老人たちがさかんに言い交わす「うらぎゅう」。<br />聞き覚えのない単語だったが、父も母も祖父もそれをよく知っているようだ――。<br />彼岸花。<br />どじょう。<br />クモ。<br />娘。<br />蟹。<br />ささやかな日常が不条理をまといながら変形するとき、私の輪郭もまた揺らぎ始める。<br />自然と人間の不可思議が混然一体となって現れる15編。<br />(解説・吉田知子)