一九二五年、刊行直後の『我が闘争』を熟読した石原はその野心をたぎらせていた。<br />高まる自国主義のなかで共振する日独、満州の謀略。<br />国家のスローガンに万歳が応え、日常は塗り潰されていく。<br />そして瓦解、夥しい死者。<br />冷静に史実を叙述しながら八六歳の作家は〈戦争の世紀〉に何を見たのか。<br />命を削って書き上げた執念の遺作。<br />