インフルエンザの流行下、幾度目かの入院。<br />雛の節句にあった厄災の記憶。<br />改元の初夏、山で危ない道を渡った若かりし日が甦る。<br />梅雨さなか、次兄の訃報に去来する亡き母と父。<br />そして術後の30年前と同じく並木路をめぐった数日後、またも病院のベッドにいた。<br />未完の「遺稿」収録。<br />現代日本文学をはるかに照らす作家、最後の小説集。<br />