満開の美しさも散りゆく儚さも、一緒に眺めたいと願うのはいつだってただ一人、おまいさんだけだった。<br />幾年もの時を重ね、季節の終わりを迎えた夫婦が愛でる花。<br />あるいは、苦楽をともにした旧友と眺める景色。<br />桔梗、女郎花、菖蒲、小梅、桜……移ろいゆく花に、ゆっくりと熟した想いを重ね綴られる、八つの絆。<br />江戸市井に生きる人々の、ゆかしい人情が深く心に沁み渡る、傑作短編集。<br />(解説・細谷正充)