仕事ひと筋で、娘に構ってやれずにきた。<br />せめて嫁ぐまでの数年、娘と存分に花見がしたい。<br />ひそかな願いを込めて庭に植えた一本の桜はしかし、毎年咲く桜ではなかった。<br />そこへ突然訪れた、早すぎる「定年」……。<br />陽春の光そそぐ桜、土佐湾の風に揺れる萩、立春のいまだ冷たい空気に佇むすいかずら、まっすぐな真夏の光のもとで咲き誇るあさがお。<br />花にあふれる人情を託した四つの物語。<br />(解説・川村湊)