手をつないだわけでもない。<br />好き合っていたのかもわからない。<br />それでも祝言を挙げると知ったあの時、涙がどうしても止まらなかった……。<br />遠い日の思い人と再会する女性の迷いと喜びを描く「やぐら下の夕照」。<br />売れない戯作者がボロ雪駄の縁で一世一代の恋をする「石場の暮雪」。<br />江戸深川の素朴な泣き笑いを、温かで懐かしい筆が八つの物語に写し取る。<br />著者の独擅場、人情の時代短編集!(解説・縄田一男)