宇治の御茶師朝比奈家の養女として、綸は碾茶製造の技術を学び、病に倒れた父の跡を継ぐ。<br />一方、徳川・豊臣の決戦近しの報が走る。<br />豊臣の恩顧に報いるべきか、徳川につくべきか。<br />文化的・政治的存在となった茶をめぐる人間模様の中で、これまで誰も取り上げなかった、御茶師に焦点を当て、激しい時代の流れを縦糸に、綸の正義感と繊細な女心を横糸に錦繍というべき世界を織り成した歴史小説。<br />(解説・末國善己)