「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ」。<br />死に場所を探す男とタクシー運転手の、一夜のドラマを描く表題作。<br />食事会の別れ際、「クリスマスまで持っていて」と渡された黒い傘。<br />不意の出来事に、閉じた心が揺れる「星六花」。<br />真面目な主婦が、一眼レフを手に家出した理由とは(「山を刻む」)等、ままならない人生を、月や雪が温かく照らしだす感涙の傑作六編。<br />新田次郎文学賞他受賞。<br />(対談・逢坂剛)