楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡……。<br />人々が思い出の品々を持ち込む〔標本室〕で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。<br />「毎日その靴をはいてほしい。<br />とにかくずっとだ。<br />いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは……。<br />奇妙な、そしてあまりにもひそやかな、ふたりの愛。<br />恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。<br />表題作ほか「六角形の小部屋」収録。<br />