人の生死は潮の満ち引きに同調すると、子ども時分に聞かされた。<br />引き潮どきに逝った谷崎潤一郎。<br />いわれに逆らうように「満ち潮どき」の死を択んだ三島由紀夫。<br />相次いで逝った父と母、戦没した息子を思いつづけた伯母の死は……。<br />亡き面影をたどり、生と死の綾なす人間模様を自在な筆致で描きだす「逆事」ほか珠玉の全五篇。<br />