小雨が靄のようにけぶる夕方、両国橋をさぶが泣きながら渡っていた。<br />その後を追い、いたわり慰める栄二。<br />江戸下町の経師屋、芳古堂に住みこむ同い年の職人、男前で器用な栄二と愚鈍だが誠実なさぶの、辛さを噛みしめ、心を分ちあって生きる、純粋でひたむきな愛と行動。<br />やがておとずれる無実の罪という試練に立ち向う中で生れた、ひと筋の真実と友情を通じて、青年の精神史を描く。<br />