昭和20年夏、敗戦へと雪崩れおちる日本の、辺境ともいうべき地に生きる人々の生き様を通し、〈昭和〉の転換点を見つめた作品集。<br />突然のソ連参戦で宗谷海峡を封鎖された南樺太の一漁村の村人の、危険な脱出行を描く表題作。<br />撃沈された沖縄からの学童疎開船・対馬丸に乗船していた一中学生の転変をたどる「他人の城」。<br />東大寺の仏像疎開作業に従事する僧侶と囚人たちをめぐる「焔髪」など5編。<br />