あたしとまだ三つだったあんたを置いて、とうさんは家を出て行った。<br />普段着でちびた下駄をつっかけ自転車に乗って、ちょっと出かけて来る、と言ってそれっきり帰ってこなかった──。<br />過ぎ去った長い時間の濃密な記憶と、緻密な描写による重層的なコラージュが織り成す甘美な物語。<br />