四国の県警捜査一課長香春(かわら)銀作は、文芸雑誌の同人誌評に引用された小説の一場面に目をとめた。<br />九州在住の下坂一夫が書いたというその描写は、香春が担当している’未亡人強盗強姦殺人事件’の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていたのだ。<br />再捜査により、九州の旅館女中の失踪事件と結びついたとき、予期せぬ真相が浮び上がる――中央文壇志向の青年の盗作した小説が鍵となる推理長編。<br />