齢五十余にして粗末な庵で想う。<br />私の一生とは何だったのか。<br />下鴨神社の神職の家に生まれながらも、不運と挫折の連続。<br />孤独を抱え、災禍に遭った都を悶々と歩き回る。<br />やがて歌の才が認められ「新古今和歌集」に入撰するのだが――。<br />晩年、独り方丈に坐し、筆を執る。<br />「ゆく河の流れは絶えずして…」。<br />人はどこから来てどこへ行くのか。<br />世の無常と、生きる意味を見つめ続けた長明の不器用で懸命な生涯。<br />(解説・細谷正充)