明治時代の終りに東京の下町に生れたるつ子は、あくまできものの着心地にこだわる利かん気の少女。<br />よき相談役の祖母に助けられ、たしなみや人付き合いの心得といった暮らしの中のきまりを、’着る’ということから学んでゆく。<br />現実的で生活に即した祖母の知恵は、関東大震災に遭っていよいよ重みを増す。<br />大正期の女の半生をきものに寄せて描いた自伝的作品。<br />著者最後の長編小説。<br />(解説・辻井喬)