「おやじ、死なないでくれ――、と私は念じた。<br />彼のためではなく私のために。<br />父親が死んだら、まちがいの集積であった私の過去がその色で決定してしまうような気がする」百歳を前にして老耄のはじまった元軍人の父親と、無頼の日々を過ごしてきた私との異様な親子関係を描いて、人生の凄味を感じさせる純文学遺作集。<br />川端康成文学賞受賞の名作「百」ほかに三編を収録する。<br />(解説・川村二郎)