将来を嘱望された陸軍大尉の小武は右腕負傷の憂き目にあう。<br />偶然にも同じ傷で同期の寺内と病院で一緒になるが、小武は切断、寺内は腕を残した施術となった。<br />廃兵となった小武はしだいに転落の気分を味わうようになるが、いっぽうの寺内は……。<br />カルテの順番という小さな偶然がわけた人生の光と影を、的確なタッチで構築した直木賞受賞作に、人間の皮肉を巧みに描き出した「宣告」「猿の抵抗」、若く美しい女に潜む戦慄をあつかった「薔薇連想」の三篇を加えた卓抜な作品集。<br />