駆け出しライターの私が、後輩の結婚式の2次会でワインを思い切り引っかけて知り合った男は、なんと宮大工。<br />食事に誘われてみれば、食べ物の好みが合い、肩がこらず、話がはずむ。<br />うーん、宮大工の女房もいいかも。<br />親しくなるうちに結婚相手と意識するのだが、それをほのめかした途端、男は青森の山寺修復に行くよ、携帯の電波も届かないような山奥だ、と音信不通に……。<br />これは「忘れられない香り」の記憶をテーマとして競作されたアンソロジーの一篇です。<br />