又左衛門は果たし状の意図を探るべく、市之丞の居場所を捜すうちにある疑念を抱く。<br />かつて友だった今の政敵が裏で手を引いているのでは? 太蔵が原の開墾という大事業を成し、下士の身分からついには藩政の中枢まで上り詰めた又左衛門。<br />しかし、執政とは策謀と収賄に満ちた泥の道だった。<br />権力に近づき腐り果てるのが望みか、市之丞は面罵する。<br />又左衛門の心は溟(くら)い。<br />現代の会社組織にも通じる、執政職の孤独や武家社会の悲哀を描ききった秀作。<br />