幼き日、母に捨てられ、寄る辺なき人生の途上に立ち尽す兄と妹。<br />青春との訣別の時。<br />2人は自らの生の証しを求め、母の面影へと通じる「海岸列車」に乗る……著者は「あとがき」でいう、「真剣に生きているまっとうな妻子ある男が、そう簡単に、まっとうな若い娘と深い関係を結ぶわけにはいかない」と。<br />ファッションのような手軽な‘不倫’ではなく、命がけの愛の姿を描き切ったこの物語は、宮本輝がまっとうに生きようとする女性たちに贈るメッセージでもある。<br />