つましい月給暮らしの水田仙吉と、軍需景気で羽振りのいい中小企業の社長、門倉修造との友情は、まるで神社に並んだ一対の狛犬のように親密なものだった。<br />門倉は、水田の妻たみに、長年ひそかな慕情を抱いてもいる。<br />太平洋戦争をひかえた慌しい世相を背景に、男の熱い友情と秘めた思慕が織りなす、市井の家族の情景を鮮やかに描いた、向田邦子・唯一にして絶品の長篇小説。<br />東宝による映画化では、高倉健が門倉、板東英二が水田、富司純子がたみを演じた。<br />