北町奉行所・同心の中根興三郎の生きがいは朝顔栽培、いつか黄色い朝顔を咲かせるのが夢だ。<br />仕事は閑職、奉行所員の名簿作成係である。<br />時は安政、井伊大老と水戸徳川家の確執や、尊王攘夷の機運が高まっているが、そんなことはこの‘朝顔同心’には無縁、長身の身体を縮めるように暮らしている。<br />だが江戸朝顔界の重鎮、鍋島直孝を通じて、宗観と呼ばれる壮年の武家と知り合ったことから、興三郎は思いも寄らぬ形で政情に巻き込まれてゆく。<br />松本清張賞受賞作。<br />