あのとき桜の下で出会った少年は一体誰だったのか──家同士の因縁がひと組の夫婦を数奇な運命へと導く。<br />‘天地に仕える’と次期藩主に衒(てら)いもなく言う好漢・蔵人と‘水戸に名花あり’と謳(うた)われた咲弥。<br />二人は夫婦となりながら結ばれぬまま、たった一首の和歌をめぐり、命をかけて再会を期すのだが──。<br />水戸光圀公と将軍綱吉の関係が緊張してゆく時代、思いがけず政争の具となりながら、懸命にそして清々しく生きる武士の姿を描いた力作長篇。<br />