「ぼくはこの病院を捨てるよ。<br />何もかも全部捨てる。<br />オレはマキと北海道へ逃げる。<br />決心したんだ」。<br />「よく見ておきなさい。<br />あれが恋という病気よ」。<br />人望ある52歳の病院長が陥った恋の病。<br />若い恋人に振り回され、次第に常軌を逸していく姿が、秘書の朝子の目を通して描かれる表題作ほか、旧家の一人娘の意外な男遍歴が明かされる「離れの人」、妻をなくした謹厳実直な男が家政婦に生活を乱される悲喜劇「沢村校長の晩年」他、円熟の傑作ユーモア小説五篇。<br />