幕末の志士の中でも、清河八郎の評判はきわめて悪い。<br />「変節漢」「山師」「出世主義者」とまで、ひとは呼ぶ。<br />今なお誤解のなかにあるこの男は、荘内藩の素封家から飛び出してきた‘草莽の士’であった。<br />卓越した頭脳と肉体にめぐまれたカリスマでありながら、ほんの少しだけ倒幕には早すぎた志士。<br />幕府の罠にはまり、同志や妻をうばわれ、長く潜行した日々。<br />郷里出奔から、攘夷を説いて諸国をまわり、ついに麻布一ノ橋で凶刃に倒れるまでの、悲運の人生を描く。<br />