あでやかな美人絵が大人気の浮世絵師・歌麿は、版元・蔦屋にたのまれた役者絵の注文を受けるべきか考えていた。<br />時は寛政3年、蔦屋が刊行した洒落本が発禁処分をうけ、蔦屋は大打撃をうけたあとだ。<br />役者絵ならば、幕府の取り締まりを受けないのだが……鬱々とした世にも、匂いたつような美人たちを描きつづける歌麿を、蔦屋にかかわる滝沢馬琴や写楽をまじえ、人間として描き出した、藤沢周平の新境地。<br />最後の場面の淫蕩さには、息をのむ藤沢ファンも多いはず!