「時は今あめが下しる五月哉」──明智光秀は、その日の直前こう発句した。<br />坐して滅ぶかあるいは叛くか。<br />天正十年六月一日、亀山城を出た光秀の軍列は本能寺へとむかう。<br />戦国武将のなかでもひときわ異様な謎につつまれたこの人物を描き出す歴史小説。<br />他に「上意改まる」「幻にあらず」「二人の失踪人」の三篇を収める異色歴史小説集。<br />