「三カラット純白無疵 ファイネスト・ホワイト。<br />丸ダイヤ。<br />プラチナ一匁台リング」(宝石商鵜飼忠兵衛ノ手帳ヨリ)昭和初期、九州の石炭王が娘に買ったこの指輪は、不思議な運命をたどり、人々の欲望と愛憎に巻き込まれてゆく。<br />可憐な新妻の手に輝いて朝鮮半島にわたり、焼け跡の東京で栄える男の手に落ち、学生デモに揉まれ、日米安保後の高度成長に沸く東京で工事現場に働く少年のポケットに収まるまで……ダイヤの華麗な流転を描いて、読みごたえある12篇の連作推理。<br />