19歳の頃、当時同棲中だった3歳上の彼女がバザーでコーヒーミルを買った。<br />早速マンデリンの豆を挽き、丁寧にコーヒーを淹れてくれた。<br />「ねえ、もう一杯お代わりしない?」何事にも想像力に乏しく幼かった僕には、昨夜帰省先から戻った彼女に訊きたくても訊けないことがあった。<br />もやもやした気持ちで苦いコーヒーを啜っていると、彼女が「とても大切な話」を切り出した…。<br />これは「忘れられない香り」の記憶をテーマとして競作されたアンソロジーの一篇です。<br />