やはり今晩にしよう──男の悲壮な決意は──自殺。<br />手広く不動産屋を営んできたが、あっけなく去ったバブルは彼に多額の負債を残した。<br />策は尽き、家族を守るための最後にして最善の手段を胸にひめつつ、ふと思い立って訪れた町で一軒の古い銭湯を見つける……。<br />ありふれているようで多様な個性に富んだ市井の人々の表情。<br />輪郭をうしなった魂が、この著者ならではのあふれる愛情をふきこまれ、しだいにくっきりとした力をとり戻していく表題作など、八つの短篇を収録。<br />