小学4年生のある日まで、忙しい母にかわって学校の送り迎えをし、自分の世話をしてくれた初子さん。<br />脚本を書きあぐねていた父と、家計をささえていた母。<br />母が実家に行ったきりになったときは、父と初子さんと私で数か月暮らしたこともあった。<br />そしてある日を境にふいに消えてしまった。<br />父が亡くなり、通夜ぶるまいの席で再会した初子さんは……。<br />これは「忘れられない香り」の記憶をテーマとして競作されたアンソロジーの一篇です。<br />