織田信長、浅井長政らの屋敷に身分を偽って仕え、機をうかがう於蝶。<br />六年前には少女めいて硬く引きしまっていた肉体は、いまや成熟しつくしている。<br />(上杉謙信公のために……)常人ばなれした女忍者の秘めた女心と香りたつ生命が、姉川の合戦で燃え上がる。<br />あとがきで著者が「……忍者小説というものは、他の時代小説を書くより層倍もつらい。<br />……めんどうなジャンルなのだが、それだけにまた、執筆中のたのしみも多いのである。<br />」と書くように、爽快な読後感がのこる名作。<br />