「この娘は、一生男を知らないまま、子宮を切り取られるのか」婚期をのがした娘の手術前夜、娘の傍らで眠る父の悲哀と甘やかな妄想を描く表題作ほか、バーで独り飲む女にバーテンダーが語った奇妙な体験「眠れる美女」、可愛かった妹の人生が低迷してゆくのを見守る兄の心理「いもうと」、初めての不倫にふみだす妻のためらい「春の海へ」、故郷の町に戻ってきた三人の女たちに渦巻くねたみと憎しみ「帰郷」など、直木賞作家の実力を堪能できる11篇の恋愛官能小説集。<br />